2025.05.26 第三者検証・ソフトウェアテスト
ゴールデンウィークの賑わいも落ち着き、日常が戻ってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、今回はソフトウェアテストの効率化に不可欠な手法の一つ、「同値分割法」に焦点を当ててご紹介いたします。
ソフトウェアテストの現場において、あらゆる入力値を隈なくテストすることは、時間、コストの両面から現実的ではありません。
そこで、限られたリソースの中でテストの品質を確保するために、様々なテストケース設計技法が用いられます。
その中でも、特に基本的ながら効果的な手法が、本日ご紹介する「同値分割法」です。
同値分割法は、入力データを「同値クラス」と呼ばれるいくつかの意味のあるグループに分割し、
それぞれのグループから代表的な値をいくつか選び出してテストを行うという考え方に基づいています。
この手法の根底には、「同じ同値クラスに属するデータは、システム内部で同様の処理が施され、
結果として類似した振る舞いを示す」という重要な仮定があります。
この仮定が成り立つからこそ、全ての値をテストする代わりに、代表値によるテストで効率的にシステムの基本的な動作を確認できます。
具体的な例として、20~100までの整数を同値クラスに分割した際に、
以下のようになります。
■具体例
・有効同値クラス
20から100までの整数(この範囲の値を代表するテストケースとして、例えば「30」や「80」などが考えられます)
・無効同値クラス:
19以下の整数(この範囲を代表するテストケースとして、「15」などが挙げられます)
101以上の整数(この範囲を代表するテストケースとしては、「105」などが考えられます)
整数以外の値(例えば、「1.5」のような浮動小数点数や、「abc」のような文字列などが代表的なテストケースとなります)
このように、入力値の範囲を有意義なグループに分け、それぞれのグループから代表となる値をテストすることで、
広範囲の入力パターンを効率的に検証することが可能になります。
また、同値分割法には以下のメリットとデメリットがあります。
■同値分割法のメリット
全ての入力値をテストする代わりに、各同値クラスから少数の代表値を選ぶだけで済むため、テストの数を劇的に減らすことができます。これにより、時間とリソースを節約しながら、網羅性の高いテストを実現できます。
また、同じような振る舞いが期待される値をまとめて扱うことができるため、テストの準備や実行にかかる時間を削減し、効率的に基本的な機能を確認できます。類似の入力に対するテストをまとめて実施できるため、テストプロセスの効率が飛躍的に向上します。
さらに、有効な入力だけでなく、無効な入力に対するシステムの振る舞いを明確に定義し、テストケースに含めることができます。これにより、予期せぬエラーやセキュリティ脆弱性を早期に発見し、システムの堅牢性を高めることができます。
■同値分割法のデメリット
同値分割を用いたテストケース設計においては、いくつかの潜在的なリスクや難しさが存在します。
まず、同値クラスの境界付近で発生しやすい不具合、いわゆる「境界値エラー」を見逃してしまう可能性があります。
これは、同値分割が各クラスから代表値を一つ選んでテストするため、境界値そのものやその近傍の値をテストしない場合に起こりえます。
また、複数の入力項目が複雑に組み合わさるようなシステムの場合、単純な同値分割だけでは、取りうる状態や条件の組み合わせに対する十分な網羅性を確保することが難しくなる場合があります。
さらに、各同値クラスからどの値を代表として選ぶかという代表値の選定も重要であり、その選択によってテストの有効性が大きく左右される可能性があります。
適切な代表値を選ばなければ、その同値クラス内に存在する不具合を見逃してしまうリスクが伴います。
以上が、同値分割法のメリットとデメリットになります。
同値分割法は、テストケースの数を効率的に削減し、基本的な機能の確認を行う上で非常に有効な手法です。
しかし、前述の通り、境界値におけるリスクは考慮しなければなりません。
そのため、私がテスト設計を行う際は、「境界値分析」を併用することで、
境界値についてもより精密な結果となるよう工夫しています。
「境界値分析」については、次の機会にでもご説明できればと思います。
効率的なテストは、高品質なソフトウェア開発の鍵となります。
同値分割法を理解し、適切に活用することで、よりスマートなテスト戦略を立てることができるため、
ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
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