2025.11.7 第三者検証・ソフトウェアテスト
11月に入り、朝晩の冷え込みに冬の気配を感じる季節となりました。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
今年も残りわずかとなり、プロジェクトでも総仕上げや振り返りの時期を迎えている方も多いと思います。
さて、これまで「同値分割法」や「境界値分析」など、
主にテスト工程で役立つ手法についてご紹介してきましたが、
この時期にプロジェクトを振り返ってみると、
「もっと早い段階で不具合の芽を摘めたら修正も簡単だったのでは?」と感じた経験はないでしょうか。
実は、開発の初期段階からテストの視点を取り入れることで、不具合の早期発見や手戻りの削減、
さらにはチーム全体の認識共有にもつながることがあります。
このような考え方を 「シフトレフト」 と呼び、近年では多くのプロジェクトで注目されています。
今回は、そんな“開発初期から参画するテスト”について、
具体的にどのようなテストをするのか、どんな効果が期待できるのかをご紹介していきます。
シフトレフトとは、テスト工程を開発プロセスの早い段階に前倒しする考え方です。
開発初期の要件定義や設計の段階でテスターが関与することで、
プロジェクトの仕様に対する問題やあいまいな点を早期発見できます。
シフトレフトのイメージ
従来の流れ:
要件定義 → 設計 → 実装 → テスト → リリース
シフトレフトを導入した場合の一例:
要件定義[テストレビュー] → 設計[テストレビュー] → 初期テスト → 実装 → テスト → リリース
テストが開発初期から関与することで以下のメリットを得られます。
1.不具合の早期発見
不具合を実装前に検知することが可能となります。
実装前に検知できる不具合の例
・仕様書上の矛盾(システムは24時間稼働」と「メンテナンスのため毎日1時間停止」の両方が仕様に書かれている等)
・あいまいな要件定義(「高パフォーマンスを実現すること」→どの程度の応答速度が必要なのか不明)
・処理手順の抜け漏れ(エラーが発生した場合のリカバリ処理が設計書に記載されていない等)
2.手戻りの削減
実装してからの不具合検出は、修正に時間がかかります。
実装前時点で不具合を検出することで工程の手戻りを防ぎ、結果コスト削減につながります。
3.認識の統一、チームの連携強化
開発、テスター、場合によっては顧客間で仕様の理解を共有できます。
また、「思っていた挙動と違う」といったコミュニケーションのミスを防ぐことができます。
4.品質の向上
仕様段階からテスト観点が組み込まれることで製品全体の品質の向上を望めます。
このように開発初期からテストが関わることで不具合の早期発見だけでなく、
チーム全体が”製品の品質をより良くするための意識”を共有できます。
1.仕様へのレビュー参加
要件定義や画面仕様の段階でテスターがレビューに参加し、テスト観点からの指摘や質問を行います。
2.コラボレーションベースのテスト設計
開発やデザイナーと一緒に、想定される操作パターンや異常に対するシナリオを洗い出します。
3.プロトタイプでの早期検証
仮設画面やプロトタイプを用いて、ユーザー視点での操作感、不具合の芽を早期に確認します。
このように開発時期に応じて、テストの観点を用いて様々なテストが可能となります。
こうした取り組みは、特別な準備をしなくてもすぐに始められるものばかりです。
弊社では、自社で運営するシステムの改修を行う際、
まず各部署に対してこれから実装する内容の仕様を共有しています。
その後、参画する各チームで開発前の事前ミーティングを実施し、
共有された仕様についてテストチームも含めて議論します。
このミーティングでは、仕様のあいまいな部分や懸念点、矛盾点を指摘し、
それぞれに対する解決案を検討します。
このように開発初期からテストチームが関与することで、
弊社では高品質な製品を安定して提供することに貢献しています。
テストは「実装後に行うもの」というイメージが強いかもしれませんが、
開発初期から関わることで手戻りを減らし、品質向上につなげることが可能です。
今回ご紹介したシフトレフトの考え方や具体的なアプローチ、そしてメリットを意識することで、
社内のプロジェクトでもすぐに活用できます。
開発初期からテストを取り入れることで、効率的で高品質な開発プロセスを実現していきましょう。

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